“三度目の、正直ポーズ”を披露した野原位&川村りら&小林勝行
第34回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された『
三度目の、正直』が11月3日、東京・角川シネマ有楽町でワールドプレミア上映された。濱口竜介監督作『ハッピーアワー』、黒沢清監督作『スパイの妻』の共同脚本を担い、本作で監督デビューを果たした野原位、出演した川村りら、小林勝行がQ&Aを行った。
物語は、パートナーの連れ子・蘭がカナダに留学し、寂しさを抱えていた月島春(川村)と、公園で記憶を失くした青年との出会いから始まる。過去に流産を経験している春は、その青年を神からの贈り物と信じ、今度こそ自らのそばで育てたいと願う。一方、春の弟・毅(小林)は音楽活動を続けている。妻の美香子(出村弘美)は精神の不安を抱えながら4歳の子を育て、毅の創作を献身的に支えていた。それぞれの秘めた思いが、神戸の街を舞台に交錯する。川村ら多くのキャストが『ハッピーアワー』に続き出演し、製作チームとともに再び兵庫・神戸に結集した。
本作では、野原監督と川村が共同脚本を担当。野原監督は「脚本は、撮影の直前でも完成していなくて。シナリオはあったんですが、撮りながらどんどん直すスタイルでやっていきました。だから、川村さんがいちばん大変だったと思います。演じながら、シナリオも直して。そのおかげか、最後まで粘れたという感じはありました」と振り返る。
川村も「正直なところ、あまりにも物理的に大変だった」と述懐。「眠る間もなく、演じている時間以外を打ち合わせとシナリオの改稿に費やしていました。脚本を手がけたことが、演じることにどのくらい影響しているか、まだ自分ではよくわからなくて。もう少し時間が経って、映画を見直した時に、どういう作業だったのかが分かると思います」と、心のうちを明かした。
続いて観客から、キャストたちの自然な演技への演出について質問が寄せられた。野原監督は「各俳優さんに、明確に「こういう演技をしてください」と指示したわけではないんです。『ハッピーアワー』の役者さんがたくさん出ているので、その方たちのベースにある、『ハッピーアワー』を通じて培ってきた基礎体力に寄せていくというか、合わせていく形になったと思います」と回答。「現場で動きはつけますが、セリフの言い方については、あまり指示はしなかったです。皆さんが『ハッピーアワー』を通じて映画出演を経験されているなかで、言葉にはしなくても、共通で分かり合える部分が多かったんだと思います」と、『ハッピーアワー』チームならではの映画づくりだったと語った。
演じた役と同じく、ラッパーとして活動している小林の撮影中のエピソードに関して質問が及んだ。この問いに笑みをこぼした川村は、「本当に小林さんの影響力がありすぎて、何を話したらいいか迷うくらい、エピソードがいっぱいあるんですが……」と話し始める。
川村「小林さんはとにかく真っ直ぐな方なので、いらっしゃるだけで場の空気が変わるんですね。小林さんがクランクアップされたあとは、スタッフも含め全員に“かっつんロス”が起こって、撮影に行く道中の車のなかで、ずっと小林さんのCDをかけながら走っている時間がありました」
一方の野原監督は、小林の演技で印象に残ったことがあったそう。
野原監督「劇中の(ラップの)書き起こしシーンがあるんですが、最初の本読みのときに、ラップをその場でやってもらったら、(単語を呟いていく)本編とは全然違う感じの、メロディがあるものだったんですね。本番でいざ撮ってみたら、一語一語出てくるような感じで、「あ、全然違うものが出てきた」と思いました。劇中だとリズムを流しているんですが、本読みのときは流していなかったんです。小林さんはその場で感じたことを経て、演じていらっしゃるんだなと痛感しました」
Q&A後の撮影では、小林の動きにつられて、登壇陣全員が指を3本立てる“三度目の、正直ポーズ”を披露し、会場はあたたかな空気で満たされた。第34回東京国際映画祭は11月8日まで、日比谷、有楽町、銀座地区で開催。
“三度目の、正直ポーズ”を披露した野原位&川村りら&小林勝行
第34回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された『
三度目の、正直』が11月3日、東京・角川シネマ有楽町でワールドプレミア上映された。濱口竜介監督作『ハッピーアワー』、黒沢清監督作『スパイの妻』の共同脚本を担い、本作で監督デビューを果たした野原位、出演した川村りら、小林勝行がQ&Aを行った。
物語は、パートナーの連れ子・蘭がカナダに留学し、寂しさを抱えていた月島春(川村)と、公園で記憶を失くした青年との出会いから始まる。過去に流産を経験している春は、その青年を神からの贈り物と信じ、今度こそ自らのそばで育てたいと願う。一方、春の弟・毅(小林)は音楽活動を続けている。妻の美香子(出村弘美)は精神の不安を抱えながら4歳の子を育て、毅の創作を献身的に支えていた。それぞれの秘めた思いが、神戸の街を舞台に交錯する。川村ら多くのキャストが『ハッピーアワー』に続き出演し、製作チームとともに再び兵庫・神戸に結集した。
本作では、野原監督と川村が共同脚本を担当。野原監督は「脚本は、撮影の直前でも完成していなくて。シナリオはあったんですが、撮りながらどんどん直すスタイルでやっていきました。だから、川村さんがいちばん大変だったと思います。演じながら、シナリオも直して。そのおかげか、最後まで粘れたという感じはありました」と振り返る。
川村も「正直なところ、あまりにも物理的に大変だった」と述懐。「眠る間もなく、演じている時間以外を打ち合わせとシナリオの改稿に費やしていました。脚本を手がけたことが、演じることにどのくらい影響しているか、まだ自分ではよくわからなくて。もう少し時間が経って、映画を見直した時に、どういう作業だったのかが分かると思います」と、心のうちを明かした。
続いて観客から、キャストたちの自然な演技への演出について質問が寄せられた。野原監督は「各俳優さんに、明確に「こういう演技をしてください」と指示したわけではないんです。『ハッピーアワー』の役者さんがたくさん出ているので、その方たちのベースにある、『ハッピーアワー』を通じて培ってきた基礎体力に寄せていくというか、合わせていく形になったと思います」と回答。「現場で動きはつけますが、セリフの言い方については、あまり指示はしなかったです。皆さんが『ハッピーアワー』を通じて映画出演を経験されているなかで、言葉にはしなくても、共通で分かり合える部分が多かったんだと思います」と、『ハッピーアワー』チームならではの映画づくりだったと語った。
演じた役と同じく、ラッパーとして活動している小林の撮影中のエピソードに関して質問が及んだ。この問いに笑みをこぼした川村は、「本当に小林さんの影響力がありすぎて、何を話したらいいか迷うくらい、エピソードがいっぱいあるんですが……」と話し始める。
川村「小林さんはとにかく真っ直ぐな方なので、いらっしゃるだけで場の空気が変わるんですね。小林さんがクランクアップされたあとは、スタッフも含め全員に“かっつんロス”が起こって、撮影に行く道中の車のなかで、ずっと小林さんのCDをかけながら走っている時間がありました」
一方の野原監督は、小林の演技で印象に残ったことがあったそう。
野原監督「劇中の(ラップの)書き起こしシーンがあるんですが、最初の本読みのときに、ラップをその場でやってもらったら、(単語を呟いていく)本編とは全然違う感じの、メロディがあるものだったんですね。本番でいざ撮ってみたら、一語一語出てくるような感じで、「あ、全然違うものが出てきた」と思いました。劇中だとリズムを流しているんですが、本読みのときは流していなかったんです。小林さんはその場で感じたことを経て、演じていらっしゃるんだなと痛感しました」
Q&A後の撮影では、小林の動きにつられて、登壇陣全員が指を3本立てる“三度目の、正直ポーズ”を披露し、会場はあたたかな空気で満たされた。第34回東京国際映画祭は11月8日まで、日比谷、有楽町、銀座地区で開催。