2021.11.03 [イベントレポート]
池松壮亮、松居大悟監督誕生日&新作プレミアをお祝い サプライズ登場で「愛する監督、おめでとう」
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第34回東京国際映画祭コンペティション部門でプレミア上映

第34回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された、池松壮亮、伊藤沙莉主演作『ちょっと思い出しただけ』が11月2日、東京・角川シネマ有楽町でプレミア上映された。上映前には松居大悟監督と女優の河合優実が舞台挨拶を行ったが、終盤で池松がこの日に誕生日を迎えた松居監督を祝うためケーキとともにサプライズ登場し、会場を沸かせた。

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池松は、松居監督に「ギリギリでした(笑)。お誕生日おめでとうございます」「東京国際映画祭で初めて上映できてとても嬉しく思います。何より、愛する松居大悟監督、(プレミアを迎え)おめでとうございます」と挨拶し、観客には「(きょうは)この映画の誕生日のようなもの。共有してくださるみなさん、本当にありがとうございます」と謝辞を述べた。

これを受け、松居監督は「胸がいっぱいです。嬉しいです。みなさんにはこれから映画を楽しんでほしいという思いもありますし、きょう産んでくれてありがたいなという親への感謝もありますし、東京国際映画祭が11月2日に上映してくれたから祝ってもらえた……ちょっと混乱しています(笑)」と、感無量の面持ちでコメントした。

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『ちょっと思い出しただけ』は、ロックバンド「クリープハイプ」の尾崎世界観が自身のオールタイムベストに挙げる、ジム・ジャームッシュ監督の代表作のひとつ『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て書き上げた新曲「Night on the Planet」に触発された松居監督が執筆した、初めてのオリジナルのラブストーリー。怪我でダンサーの道を諦めた照生(池松)とタクシードライバーの葉(伊藤)を軸に、様々な登場人物たちとの会話を通じて都会の夜に無数に輝く人生の機微を、繊細かつユーモラスに描いた。

松居監督は、10年来の親交がある池松を今作に起用した理由を、「尾崎くんと池松くんと僕が、20代の頃にすごく「なにか新しいものを作ろう」とやっていて、ちょっと息切れして離れ離れになったんですけれど、今回は勝負がしたくて池松くんにお願いした」と明かした。その過程で、「(作品に)太陽みたいな人がいたらすごくいいなと思って」と伊藤の起用を決めたという。

また、河合の芝居について聞かれると、「台本で想像していた演技とはまったく違う雰囲気。それがだんだん生き生きとしていくという意味で、すごく追い抜かれていったし、なんだか足首を掴みながら(役の)イズミを見つめていた感じがあります。おもしろかったです」と述べた。

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河合は、「大丈夫だったのかな……(笑)」と本音をこぼしたが、「(監督は)不安もあったのかなと思うのですが、周りのキャストの人たちに私もイズミとして変えられながら、成長させられながらひとりの役になっていく感覚だったので、いまの言葉はすごく理解できました」と安どの表情を浮かべた。

上映後にはQ&Aが行われ、松居監督が質問に答えた。コロナ禍の前後を描き、物語が現在から過去にさかのぼっていくスタイルで進行する意図については、「最後にこの曲(『Night on the Planet』)が流れる物語を考えようというところから(スタートした)。ジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』はまったく同じ時刻のいろんな場所の話。僕たちがやるときに、世界各地の話はできない、特にこのご時世では絶対に東京ロケだろうと思った。そしてまったく同じ日付の定点観測のやり方にしようというところから、遡って段々幸せだった頃にいくというのが、コロナ禍ということも含めて捻り出したという感じです」と率直に語った。

また、映像作品に舞台作品を組み込むことの狙いと、どのような成功があったかについて問われると、自ら演劇も手掛ける松居監督は「演劇を売り込もうというよりも、劇団ををやっているからこそ、演劇の景色を知っている。その分、普通の会社員の生活をあまり知らないんです。そうなったときに、説得力とリアリティという意味で持ち込みやすくなる」と、真摯に回答。

「今回に関しては、照明のピンスポットをやっている人の横顔とか、すごく格好いいなと思って。演者を照らしている人たちが照らされるようなストーリーにしたいなと思ったときに、照らされていたが照らす側にいく男を軸にしようと。結果的にかもしれないですが、演劇だからそういう風に持ち込めました」と物語の根幹を明かした。

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『ちょっと思い出しただけ』は、池松、伊藤、河合のほか、國村隼、永瀬正敏、神野三鈴、成田凌、篠原篤、菅田俊が出演。「クリープハイプ」が劇中で演奏するバンド役として参加している。2022年早春に全国公開。第34回東京国際映画祭は、11月8日まで開催。
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