2021.11.06 [イベントレポート]
西島秀俊、17年越しにA・ウィーラセタクン監督とのタッグ実現へ「全編雪原、全裸」も「やりますよ」
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西島秀俊とオンラインで参加したアピチャッポン・ウィーラセタクン監督

東京国際映画祭と国際交流基金アジアセンターの共催によるアジア交流ラウンジで11月6日、俳優の西島秀俊とオンラインで参加したタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の対談が東京ミッドタウン日比谷パークビューガーデンで行われた。

2人は、ウィーラセタクン監督の『トロピカル・マラディ』が04年の東京フィルメックスに出品された際、一緒に食事をした旧知の仲。同作を「偏愛している」という西島が、「その時にアピチャッポン監督が、僕で映画の企画を考えていると言ってくださったんですよ」と切り出した。

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その内容については「全編が雪原で全裸というすごい企画。何が起きるかも、時代も分からないけれど、めちゃくちゃ面白かった」と説明。ウィーラセタクン監督も「SFだよね。ずっとやりたいと思っているよ。でも課題はお金がかかることと撮影場所。でも、エンディングを再考すればまだできるんじゃないかな」と期待を持たせた。

西島は「雪原はきついなあ。僕、もう50(歳)ですから」と苦笑しつつも、「やりますよ」と乗り気。さらに、「アルゼンチンに行った時に、恐竜の化石がごろごろ転がっているような、本当に何もない砂漠があったんです。耳鳴りがしそうなくらい静かで、そこはいいかも」とロケ地候補を提案するほど構想を膨らませた。

西島が主演した濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』、ウィーラセタクン監督の『MEMORIA メモリア』はともに今年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選ばれ、脚本賞、審査員賞をそれぞれ受賞。ウィーラセタクン監督は、ニューヨーク国際映画祭で『ドライブ・マイ・カー』を見たそうで「壊れた心を持っている人たちが表現されていて、陶器の欠片をはめても元通りにはならないように不可能なことに挑んでいる。大きなインパクトがあり、感情レベルではなく知的レベルで心に響くものがあった」と評価した。

『MEMORIA メモリア』は今回、ガラ・セレクションで上映され、西島は「音と光の表現に、まあビックリした。アピチャッポン監督は記憶と夢がずっとテーマで、それがよりはっきり出ていて静寂は神聖な感じがした」と称賛。その上で、初めてタイではなくコロンビアで撮影した意図やテーマ性に関する見解について質問をぶつけた。

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ウィーラセタクン監督は、「タイの政治的混乱で、僕の未来をとらえる視点にも影響が出た。映画祭でコロンビアに行った時に街に魅了され、新しい場所で改めて映画制作を勉強しようと思ったんだ。映画と夢をつなげるために、なぜフィクションが必要なのか。夢は意識から離れた世界とつなげられるものだから、生きている証として映画が必要だと思い追求してしまうのかな」と解説。西島も納得の表情で聞き入り、「いろいろな解釈ができるので、自分の考えをいろいろな人と話したくなりました」と話していた。

第34回東京国際映画祭は、11月8日まで開催される。
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